3/21/2010

個人事務所の大企業病

office D3として設立して、正式な形でグラフィックデザイン制作やプランニング、アートディレクションをやるようになって11年。
10年目を過ぎたあたりから自分で異変は感じていた。何だかな〜と。

なんとなく、仕事に飽きていたというか、どうも小手先で制作しているなーというか。制作していても面白くないと感じることが多くなり、制作スピードも遅くなったり、面白くない仕事は、ついつい後回しにしてしまったりしていた。これは、やはり10年も同じ仕事をしていると、人間って慣れてしまって、あまり悩まなくなる。楽と言えば楽だが、どうしても怠けてしまうようになる。集中してないんだな。そんなことを漠然と抱えながら過ごした昨年だった。個人事務所にも大企業病みたいなものがあるんだなと実感したわけだ。マンネリ化してくる。

自分のような、何かを制作する仕事というのは、日々の仕事がマンネリ化してくると、色々なものが停滞する。
自分の気分がクオリティに大きく影響してしまうからだ。これは自分では気づきにくいし、まぁなんとなくでも回っているものを変えるのは面倒くさい。しかもいけないことに、そこそこのクオリティは慣れで維持できてしまうから、クライアントから大ダメ出しを食らうとか、そういう大きな問題は起きなくなる。でも、細かい部分がルーズになってくる。これは自分でも気づいていた。それでも、ついつい「まぁいいか」と日々を過ごしてしまう。しかし、この時点で危機感を持って、自分が楽しめて、パッションを感じられる体制にしていかないと、きっと遠くない将来に仕事として成り立たなくなるんだろうけど、人間楽したい生き物だから、今が良ければ、まぁ明日考えましょう。にしてしまう。自分も例に漏れず、11年目の昨年は、なんだか「自分は、これから何がしたいのか?」と、自問自答することが多かったように思う。明らかに、今まで10年やってきた仕事の進め方には正直飽きていたんで当然なんだけど。会社に勤めるデザイナーからしたら贅沢な悩みと見えるかも知れないが、個人事務所の場合は、自分が飽きてしまうと歯止めが効かなくなるから結構怖い。誰にも怒られないから、際限なく好きにできてしまう。自分を律することなんて全く無理。

自分を律することが無理なのはわかっている。それはできない。
それができないのなら、程度の差こそあれ、自分がパッションを感じながら仕事できる状況を自ら作るべきなんだろう。これは、これから年を取ってゆく自分にとって重要なことなんだとも思う。これからの何十年も、今までと同じように作り続けるほど職人的プロでもないし。

ここ数ヶ月に色々な偶然が重なって、久しぶりに「あ〜なんか面白いなぁ」と思える仕事が始まった。全くわからない業種。もう全然別世界。だから面白い。
仕事の進め方の基礎も何も知らないから、自分がベストだと思える方法で進めている。思い違いだらけで効率悪いんだが、なかなか楽しめている。仕事って、こういうことだね。やっぱり。こうじゃないと覚えないし考えなくなる。

楽しめなくなってくると、とかく収入などのことばかりが気になってしまうようになるが、クリエイティブという職種に関して言えば、それは本末転倒なはずだ。結果のことばかり考えていては過程が楽しくない。楽しくなければ、細かい部分でのクオリティが上がらない。こういう図式。わかっているけど、それだけでは、どうにもならない状況ってのもあるだろう。でも、やっぱり大事なんだな。


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2 件のコメント:

サトウマ さんのコメント...

最近、私も似たような事を考えていました。
収入の事はもちろん不安なのですが、実際今の仕事が面白くない。なんだかな〜という感じ。
物を作る立場で、自分の気分が仕事に出てしまうと、保守にまわって本末転倒はほんとうに気をつけないといけないなぁと思います。
しかし自分のコンディションを楽しめるところにもっていくのはなかなか大変ですよね。

d3/office D3 さんのコメント...

>サトウマさん
そうですねぇ。面白くないのはいけません。一度飽きてしまったものには戻れないんですよね。

ではと、新しいことをやってはみたものの大失敗。なんてことも少なくないから、むやみに人に勧めることもできないんですけどね。

こういうのって大企業だと、新規事業とか言うんだと思います。