1/11/2010

セッションタウン東京

最近、色々なところで「ブルースセッション増えたよね〜」という話をするようになった。確かに増えた。

2年くらい前からブルースセッションに特化したセッションカレンダーを毎月制作〜発行しているから、その増加ぶりが良くわかる。引越しの時に、セッションカレンダーの整理をして、古いものをアーカイブとして保存してみたら、最初は7件とか、そんな感じだった。もちろん最初は身内だけで始めていたから、もっとたくさんあったんだが、それでもここ1年くらいの増加ぶりはすごい。

今では、21件もの掲載店があるし、発行部数も2000部に増えた。たぶん、それでも実際には、現在掲載している2倍くらいはあるんじゃないかな。と思う。東京、千葉、埼玉、横浜地域の定期開催店だけで現在21件。これだけで、ほとんど毎日ブルースが演奏できる感じだ。ここに不定期のものも結構あるので、東京近郊で言えば、本当に毎日セッションに行くことができる。

これって、おそらくは世界でも有数だと思う。ロンドンやパリはもちろん、NYだって、こんなにやってない。ブルースの聖地テキサス周辺だって、全然。こんなにやってない。さすがにシカゴは、これくらいはやってるだろう。ニューオリンズやオースティンとかアセンズあたりも東京より多いかも知れない。でも、これらの地域は、セッションが観光資源でもあるから当然と言えば当然。ジャズやブルースのセッションが観光資源でもない東京は、そういう意味では世界一のリアルジャムセッションタウンだと思う。これを存分に楽しでいる人は、何気に東京の使い方の達人なのかも知れないと思う。

そもそも東京は都市規模としては世界最大だ。こんなに巨大なエリアの首都圏は世界中探してもそうはない。ロンドンの中心地であるピカデリーサーカス周辺だって、歌舞伎町より小さいくらいだし、マンハッタンだって、一日あればバッテリーパークからセントラルパークの端まで歩ける程度でしかない。マジソンスクエアガーデン周辺に限って言えば渋谷くらいなものだ。

だから東京は店も多く、意外にジャムセッションなどの音楽に触れることができる現場は多い。ただ日本自体が極東に位置しているため、NYのように欧米のスタープレイヤーを気軽に・・・というわけには行かない。でも、それは、NYで気軽にジーザス永山を見れないというのと同じというだけのこと。東京にも素晴らしいミュージシャンはたくさんいる。欧米に比べるとチャージが若干高めなのが問題なんだが・・・。

しかし、セッションにも流行り廃りがあるようで、一時期とても多かったフリーセッションは少し減った感がある。やっぱり、何も縛りがないというのは逆に難しいだろう。全く知らない人同士が音を出すには、よりどころとか基準がないと収拾がつかなくなる。「自由に音楽を楽しんでください」というのは聞こえは良いが、ちょっと無責任な気もするんだな。結果的には無責任になりがちだ。誰もが演奏しながら、音がどこに行こうとしているのか判断〜修正しながら演奏できれば話は別だが、実際それはとても高度なことだと思うし、自分のプレイで精一杯では、それどころではなくなる。だからフリーセッションの場合はホストの力量が重要なんだと思う。やっぱりベースかな。ベーシストが全体を支配してコントロールしてくれれば、何とかなるかも知れない。エンディングにはドラマーの助けも必要かも知れないから、強力なリズムセクションがホストなら、フリーセッションも存続しやすいかも知れない。

それに引き換え、ブルースは気楽な一面がある。12小節のフォームが全てを助けてくれるから、わりとクオリティが維持しやすいんだろう。その分、ホストは楽かも知れない。ブルースの場合は、どうしても音量が上がりすぎて箱が音で飽和してしまうことがあるので、そこだけ上手くバランスが取れれば安定して楽しめる現場が作れる。

ジャズの場合は、やはりある程度曲を知っているということが重要だろう。ブルースは、曲を知らなくてもフォームとコードで演奏できてしまうが、ジャズの場合は、よりどころがテーマメロディなので、これを知らないとなかなか難しい。特にソロとかはメロを知らないと支離滅裂なソロになりがちで一気に難しくなる。この辺りの違いがブルースマンがジャズを難しく感じる所以かも知れない。

 
いずれにしても、今の東京は、とても巨大なセッションタウンの一つであることは間違いない。
それは何を意味するのかと言うと、これこそが“環境”なんだと思う。その地域独特の音楽環境が、その地域独特の音楽を創る重要な一因であることは間違いないと思う。例えば、ある時期のオークランドに素晴らしいミュージシャンが集結したのは、オークランドが深夜までセッションできる環境だったからだし、ニューオリンズでミクスチャーであるジャズが誕生したのは、ニューオリンズが港町だったからだ。もちろん、かつてのリバプールだって同様だろう。そう考えると、もっと上手に東京の環境を使えたら何気に何でも揃っている東京は、そう悪い音楽環境ではないんじゃないかと思えてくる。要は楽しみ方次第だし、捉え方次第ということなんじゃないかな。

理想を言えば、いくつかの地域に音楽できる店が集中してくれるといい。ミュージックチャージはフリーで各店を自由に回れると、もっと良い。そのためには、ドリンクの自販機が消滅してくれるといい。(爆) 飲み物が欲しければ、どこかの店に入るしかない。という環境。これ何気に強制感がなくて良かった。テキサス州オースティンでのSXSWが、そうだったが、これはスマートでいいなと思ったんだよな。なるほどな。と。 でも、さすがに東京みたいに自販機あると無理だね。そりゃ移動の最中にはるかに安い自販機で買って燃料チャージするようになるだろうし、路上の雰囲気が悪くもなるだろうから実現しないんだろう。 でも、まぁこれも東京の持つ環境ってことで、これも考慮した上でやらないと上手くは行かないんだろな。


そんな自分は、明日、新橋ZZでSpider's JAM 今年の一発目。


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3 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

Awesome! 文句なしに素晴らしいbig pictureだと思います。さすがドッヂさんだわ<(_ _)>。
ふらりとお店に入って演奏をちょっと聴いてみて、面白そうだったらバーで飲み物を買ってじっくり聴くというパターンはいいよね。ハコがB2Fなんかだと無理かw。

kuro さんのコメント...

僕も全く同感です。
ブルースセッションに数年前から行くようになったのは、その環境があったからなんです。そして多くのミュージシャンと知り合い、刺激を受け更に精進しようと思う。

夜の楽しみ方も全く違ってきました。今日はどの店にセッションに行こうか、などという事は昔は考えられなかった。

いい時代と東京という世界有数のセッションタウンの恩恵ですね。

ドッチーさんの考察、本当に見事です。

d3/office D3 さんのコメント...

WAO!
世界を自分の目で体で知る行動派の先輩お二人から共感いただけるなんて光栄です。


>TATSUYAさん
Awesome!
これホント良く交わした言葉です。w
ハコが地下でも、バンドがいまいちだったら、そのまま出てきてしまえばいいんですよ。そのためのノーチャージなんです。そうなれば店も考えますし、良いバンドしか残りません。好循環が生まれます。 そうでもしないとライブは身内しか来ないじゃないすか。それでは、音楽の持つコミュニケーション機能は全然発揮されません。もったいないんですよ。アメリカに住まれていた時に、いいバンドのハコで知り合った奴っていたでしょう? すぐ隣にいる奴が「Hi! こいつらイカすよね? どっから来たの?」 こういうの普通ですよね。これがいいんですよ。音楽って最高だなって思える瞬間です。

まぁこれは羨ましい環境の部分ではありますが、これはアメリカのやり方の良いところ。東京ではやり方を変えないと同じ結果は得にくいですね。答えはなかなか難しいですけどね。


>Kuroさん
KUROさんのルート66をめぐる旅。あれ最高にいいと思います。日記や写真を見るだけで自分も旅した気分になれます。いつもありがとうございます。是非続けてもらいたいです。

僕も色々な旅をしてきたんですが、やっぱりテーマを持って旅をすると、心に残りますし、計画が楽しいんですよね。僕はふらり旅よりも、考え、計画して行く旅のほうが好きです。

世界から見た、東京の音楽環境をロクに知りもしないのに、自らの環境を卑下ばかりしている人がいますが、むしろ、そんなスタンスでは何も創造できないと僕は思います。現在の東京の音楽環境は素晴らしいと思います。もちろん完璧なんてあり得ませんが、かなり良いほうだと思いますし、セッションタウンとしては質、量共に世界有数の都市であることは間違いないです。これが東京の強みであり、この環境から出てくる雰囲気こそが世界から見た東京のテイストに成り得る大きな可能性を持っていると思います。

でも、別にいいんです。大げさなことを仕掛けようってわけじゃないんです。そんな必要もないと思ってますし、企画屋の仕掛けみたいのは古いです。ごく自然に気軽な規模で楽しめばいいと思うんですよ。提供する側は、自然に楽しめる環境をさりげなく提供するだけで十分なんだと思うのです。一つ一つはさりげなく普通にやってるようでも、全体として俯瞰で見てみると、結構すごい雰囲気として見えると思うんです。それは自然なことですね。

色々仕掛けられてるのって正直ウザいんです。音楽やる人間のセンスからしたらダサくないすかね。
組織化して大規模なフェスにしてとか・・・
これは音楽発展途上国時代には効果的かも知れませんが、現代の東京のように成熟してくると、逆にダサいですよ。
そういうのはAKB48に任せときましょう。(笑)

僕たちが好きな音楽って、もっとインディーなほうが格好いいと思います。ポップスもロックもジャズもブルースも。