7/09/2009

乱丁騒ぎ

ここのところ大手出版社で、大型乱丁騒動が頻発しているが、制作現場では、もう何年も前から、この問題は議論されてきていた問題だ。これは出版に限らず、広告デザインの現場でも非常に問題になっているし、よほど注意しない限り今後も改善される見込みはない。それは、時間とコストの問題だから、制作環境と意識が変わらない限り直らない。今、出版社には「校正マン」がいなくなった。たぶんリストラだろう。かつては「え〜と、5ページと122ページで同じことを言っているんですが、言い回しが違ってますね。」とか、とにかく重箱の隅をつつくような、とにかくこまけ〜奴が必ずいたが、今はほとんど化石扱い。今は、編集長とか担当エディターが校正をする。広告なら、制作者とかクライアントってことになる。まぁクライアントも、かつては広告のプロである広報部が一括して行っていたので、ある程度安心できたが、今は事業部からの直出しが増えたので、わりとテキトーだったりする。しかし考えてみたら、制作者が校正したのでは、校正にならないと思うわけだ。(笑) 制作者が見落としてしまう部分を見つけるのが校正だから、それを当人がやっていては何の意味も効果もない。w

でも、ここで一つ思うことがある。

例えば、改行して頭に「。」がついているなんてことがある。こういうのって、制作的にはあり得ないんだけど、わりとみんな慣れてるよね? たいして気にしないよね? でも、こういうのは素人仕事なんだな。でも、実際には、先日廃刊になったSTUDIO VOICEでも何度も見かけた。廃刊になったのは自業自得だと思っている。 あれはC社制作になってから、だいぶ良くなったけど、その前のT社制作の時代はひどかった。もちろんテキスト周りの実験をしていたのだろうけど、そこに誠意は全く感じられなかった。とにかく読みにくくて、そのあたりで購読をやめてしまった。デザインばかりが気になってうっとうしい。もっと普通でいい。明らかにデザイン過剰だったと思う。少なくとも、文字というのは、明確な意味を伝達する機能を持っているもので、デザインオブジェクトとして扱いすぎるのはどうかと思う。もっと文字である意味を大事にして欲しいと思う。これは、やはりアートディレクター全盛の弊害だと思う。もっとコピーライターや編集者、作家は文字の扱われ方に意見すべきなんだと思う。「なぜ、こんなレイアウトにするんだ?」とか「この背景に、この文字色は読みにくすぎる」とか、もっと言うべきなんだが、どうもアートディレクターの発言権が大きすぎるように思う。ライターさんは、みんな雇われライターのように萎縮していて、自分の意見を言わない。これが現在の出版低迷の原因の一つのような気がする。まぁ生活がかかっているから・・・と言われてしまうと辛いものがあるのも事実だが、やっぱり見た目だけのデザインに誤摩化されちゃダメだ。雑誌や本を始めとする文字メディアが面白くなくなる。文字というのは、良く考えるととても面白いものだ。見た目は、とてもグラフィカルなのに、それらを組み合わせるだけで、何十倍もの具体的な意味を提示できる便利なものだ。かなりマニアックかも知れないが、文庫本などでも、美しく縦に組まれた本はスラスラ読めるが、テキストレイアウトがヘタクソだと全然読めない。開いた瞬間に「わ〜」と思える字面というのはすごく大事。その暗号の組み合わせの向こう側には、本の持つ世界観が映像となって広がる。これが良い本だと思う。子供の頃に読んだ「ワシントン」とか「ベーブ・ルース」は、自分が主人公になって、本の中に入り込めたし、それが本の魅力でもあった。そして、たまに来る挿絵。これは想像力の燃料みたいな意味があるので適切なところに配置されなくてはならない。「お〜! そ・それはマシアス先生におこられるぞ!」と、ドキドキしたりもした。つまり、子供向けながら、とても良くできていたと思うし、今考えると制作者の責任感を感じるものだった。そういうものは「こんなとこ誰も気にしないでしょ」な部分にこだわらないと作れない。誰も気にしないところにこだわる理由は、誰も気にしないところをおろそかにすると、誰もが気づくところまでおろそかになってしまうからいけないし、さらに、そのことに誰も気づかなくなるからいけない。悪気はないんだと思うし、制作会社のデザイナーは、低賃金で本当に雑誌が好きで作っている人が多いのもわかっているが、気づけなくなっているのも事実だし、そんな余裕を持てないくらいの納期や賃金であることも事実。これは斜陽産業の悲しさなんだろうか? もう「ペンで闘う!」なんて時代ではないのは確かだけど・・・いや、でも、キーボードで闘える時代でもあるような気もするし・・・。でも、ペンで闘うのとキーボードで闘うのは闘い方が違うね。そこを嘆いても仕方がないが、あえてペンで闘ったら面白いものができるのかもしんないな〜。でもねぇ・・・そういう人って面倒臭いんだよね。日常的には。(笑) 「もう普通に行きましょ〜よ〜」な時に「馬鹿野郎! 手ぇ抜いてんじゃねーぞ!」とか、いちいちケンカ腰の人。これもこれで厄介。w 怒鳴っても何も解決しないのに・・・なので、そういう現場に戻したいってわけじゃない。ああいうのは問題そのものに対しては後ろ向きで無意味に見えてしまうから嫌いだな。(笑)


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色々挑戦するガチャピンだな。カワイイす。(笑)


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4 件のコメント:

snowfall さんのコメント...

校正マン・・いらっしゃらなくなりましたね。
あの人は今何をしているのだろう・・と思ってしまったり・・。

想像力の燃料!なるほど。
文庫のカバーを作る仕事を最近しているのですが、
想像力っていうか妄想力っていうか、
とにかく、この本を読みたい!って思うようなカバーを作ってあげないとなぁ、と
思ってます。
作る時点では、A4一枚にまとめたあらすじくらいしか情報無いんですけど(笑)

しょこら さんのコメント...

改行してほしいw

ガチャピン似てるっ!!w

Unknown さんのコメント...

本読むの大好きです♪
いわゆる「ジャケ買い」するときもあるんですけど、必ずぱらぱらとめくって、文字の並びを確認します。
そーしないと、読んでていらいらする原因になるんだもん・・・。

d3/office D3 さんのコメント...

>snowfall さん

本の装丁デザインは大変な仕事だよね。
おそらく音楽のジャケよりも重要なんじゃないかと思う。本の場合。

本のモノクロ挿絵が昔から好きで、給油ポイントというか、そこで世界観確認〜修正みたいな給油ポイントだと思うんです。そうなると装丁は入り口のゲートかなぁ。とにかく重要ですよ。僕は装丁は満足ゆくものが作れないから、今はあまりやってません。残るものは怖いねぇ。その点、広告は賞味期限がある分、デザインを絞りやすいかな。ちょっと使う頭が違う感じ。

なにはともあれ、出版業界、およびライターさんには、がんばって乗り切ってもらいたいもんです。

>しょこら
だから、デザイナーに書かせると、こうなるんだよ。w
読みやすく直しといたから。

http://www.d3web.info/Peace.gif


>Yumiさん
(yumiさんって、いっぱいいるよね(^^;)

文字列のレイアウトって大事だよね。
僕は小学校6年生までは、本が大好きで、週1冊ペースで6年間読んでいたような子供だったんですが、中学一年生の時に、伯母さんが贈ってくれた一冊の本をきっかけに全く読まなくなりました。
それ以来、本は滅多に読んでないのです。その本はゲーテの「ファウスト」(笑) 中学生には難しすぎました。
文字のレイアウトも読みにくくて、全然進まなかった。
メフィストは結局どうなったのか、未だに知りません。w